🔍 診立て
50代女性。普段はずっと軟便が続き、お腹の調子が不安定、疲れやすい、食後に胃もたれ。氣脈功測定で脾7.2(やや低め)。脾虚湿盛の状態。連休に外食が続き(油っこいもの、揚げ物、脂身の多い肉、特にお寿司などの生もの)、急に2日くらい便秘になった。その後また出てきたが出にくく、軟便のような状態。氣脈功:脾7.2→5.2(-2.0)。
💡 東洋医学的メカニズム
1️⃣ 生もの(お寿司)を食べる:寒湿の性質
2️⃣ 脾の運化作用が低下:脾は湿を嫌い、冷を嫌う。もともと脾虚の人には大敵で脾陰虚を招く
3️⃣ 陽気を抑えられなくなる:脾陰が虚すると陽気を制御できず、相火が妄動
4️⃣ 隣接する胃に熱が発生:脾胃は表裏関係、脾の陰虚→胃熱
5️⃣ 陽明経つながりで大腸へ:胃(陽明胃経)と大腸(陽明大腸経)で熱が伝わりやすい
6️⃣ 大腸の熱が便の津液を枯渇:大腸の熱が便の水分を乾かす→便秘(熱秘)
7️⃣ 熱が去るともとの脾虚湿盛に戻る(でも脾5.2とさらに弱体化)→また軟便
📊 氣脈功
| 時期 | 脾 | 状態 |
|---|---|---|
| 普段 | 7.2 | 脾虚湿盛、軟便 |
| 外食後 | 5.2 | 脾陰虚、便秘(熱秘) |
| 治療後 | 9.2 | 劇的回復(+4.0) |
📊 脾5.2の意味
脾陰虚+脾気虚の複合状態。運化作用がさらに低下。「出にくいけど軟便」:押し出す力がない(気虚)←出にくい、でも水分は多い(湿盛)←軟便
🎯 なぜ油っこいものも影響したのか
油は湿を生む→脾虚の人に湿邪が加わる→湿が停滞すると熱に転化(湿熱の発生)→湿熱が大腸に停滞→便秘に拍車
💊 処方
五積散:寒湿を散らす、気血を巡らせる、脾虚寒湿に対応、気滞を解く→便通改善
フローラ:腸内環境改善、大腸の熱を間接的に冷ます、腸内細菌叢の乱れを整える
婦人宝:血分補充、脾陰を間接的に補う、血虚があると陰虚になりやすい
治療原則: まず通路を開けて(五積散・フローラ)、それから補う(婦人宝)
💉 鍼灸治療
承光やや前灸・霊道補:全体の氣を大きく持ち上げる→脾5.2→9.2(+4.0)の劇的回復
手三里瀉:大腸経を調整→便通の不安定を整える
腎兪・腰眼灸:腎を温存→元気の根本を支える
⚠️ 脾虚の人が避けるべき食べ物
生もの(刺身、寿司):寒湿の性質で脾の運化作用を直撃→脾陰虚を招く
油っこいもの(揚げ物、脂身):湿を生む→化熱→湿熱が停滞
冷たいもの(アイス、冷飲料):脾を直接冷やし陽気を損傷→運化不能
甘いもの(砂糖、お菓子):湿を生み脾を困らせる→浮腫の原因
乳製品:湿痰を生み脾胃に負担→消化不良
✅ 脾虚の人におすすめの食べ物
消化に優しいもの:お粥、うどん、白米、温野菜、白身魚、鶏肉
脾胃を温めるもの:生姜、ネギ、かぼちゃ、山芋、なつめ
発酵食品:味噌、納豆、漬物、ヨーグルト(常温で少量)
温かいスープや煮物:野菜スープ、鶏スープ、煮物
食べ方:腹八分目、よく噛む、ゆっくり食べる
【院長の眼】
東洋医学の素晴らしさは、「軟便の人が便秘になる」という一見矛盾する現象を理論的に説明できることです。もともと脾虚湿盛(慢性)で軟便だった方が、外食刺激(生もの)により脾陰虚→胃熱→大腸熱(急性)で便秘になり、熱が去ると脾虚湿盛に戻る(でもさらに弱体化)という病理連鎖。生ものは脾陰虚を招き、脾陰虚は陽気を制御できず、陽明経で胃→大腸へ熱が伝導し、大腸熱が便の津液を枯渇させ一時的に便秘(熱秘)になる。熱が去れば元の軟便に戻る。脾5.2という数値は脾陰虚+脾気虚の複合状態を示し、「出にくいけど軟便」という一見矛盾した状態を説明します。治療は五積散・フローラ・婦人宝で、まず通路を開けてから補うという當山式の基本。鍼灸では承光やや前灸・霊道補で脾5.2→9.2(+4.0)の劇的回復。これが氣脈功と東洋医学理論の力です。